とんでもない会葬者の話
葬儀に参列する時に
「あれ?ここの斎場で合ってるんだっけ?」
そんな経験は有りませんか?
非常に珍しいことだけど、同じ市区町村・同じ苗字・同じくらいの歳・同じ性別(女性)の二人が、同じ斎場で同時に通夜をやることになった。
しかもいくつか部屋がある斎場なんだけど、よりによって隣同士。戦前生まれの人で、カタカナの名前も結構なニアミス具合。「イエ(仮名)」と「イネ(仮名)」みたいな。
もう嫌な予感しかしない・・・
斎場から事前に言われてたんで、隣の葬儀屋と相談して、表の看板に氏名だけじゃなくて、住んでいた町名も入れておくことに。市区町村は同じだけど、流石に町名は違ったんで、助かった。
更に双方のスタッフを一名ずつドアの前に配置して、会葬者に呼びかけをしながら、それぞれの部屋に案内することに。間違えて香典なんぞもらっちゃったら、後が面倒なんで。
大きな混乱もなく無事開式。
焼香も終わり、坊さんの法話が始まったころ、うちのスタッフに付き添われた何やらダンディなおじいちゃんが。
俺はユリ・ゲラーか!?
尋常小学校って・・・まさかの戦前・・・
どうやら昔の仲間から訃報を聞いて、その人に連れてきてもらう予定だったらしいのですが、頼みの相方が体調を崩してダウン。
仕方なく一人で来ることになってしまったんだとか。名前は聞いてきたが、故人同士の名前は似てるし、本人もだいぶ高齢。どっちがどっちだかわからなくなってしまったらしい。
しかしそう言われても、こっちも超能力者じゃあるまいし・・・
言い切ったね!!!
見事に言い切った!!!
仕方ないんで取り敢えず中に入って、親族を呼んで確認してもらうことに。
だから俺はミスターマリックか!?
ちょいちょいこっちにイチかバチかの二択迫ってくるの、やめてくれんかね!?
念のため、他のスタッフを隣の式場に派遣して、捜索願を出しておいたが、まだ朗報は届かない。
困った・・・本気で困った・・・
そう思ったその次の瞬間!
チャラ~ン!
神が舞い降りた!
遺影に???
イエーイ!!!!
なんてダジャレ言うてる場合じゃないが、こいつは助かった!
早速受付を済ませてもらい、坊さんが退出するのを待って式場内へ。
焼香を済ませ、懐かしそうに遺影を見つめるおじいちゃん。
他の遺族が食事の為、別室に移動した後も、喪主を勤める故人の娘さんと二人で、思い出話に花を咲かせていました。
その後おじいさんを食事の席へと案内し、ホット胸をなで下ろす。
最初はどうなることかと思いましたが、無事丸く収まって良かった良かった。
少し涙目になりながら、喪主さんもそうおっしゃってくださいましたし。
ええ話や~
後輩がワタワタしながら、隣の葬儀屋さんとやって来るまでは・・・
ガーッテーム!!!!
その後、隣の葬儀社のスタッフが数人で押しかけてきて、香典回収、関係者に片っ端から頭を下げた後、おじいさんを拉致るかのようにして、嵐のように去って行きました・・・
後に残るは一陣の風・・・
喪主さんがボソッと一言。
それがいい。それがいいね・・・
あの出来事は夢だった・・・
せめて故人の名前くらいしっかり分かるようにしてこようぜ!
って思ったとんでもない会葬者の話。