とんでもない遺族の話
結婚・・・それは言うまでもなく、人生における最重要級のイベントのひとつであり、最大級の喜びでもあります。
たった紙切れ一枚で、全くの赤の他人が、夫婦として、倫理的にも社会的にも大きな権利と責任を保有をすることになる。
たかが紙切れ一枚、されど紙切れ一枚・・・
遺族の代理で死亡届を役所に提出する葬儀屋にとっては、令和に改元されたてしばらくは、館内に溢れかえる婚姻届け待ちのカップルに交じって、精神的にも肉体的にも大きな負担を強いられましたが、婚姻届けの提出は一大行事ですよね。
とある日の早朝、都内の病院にご遺体の引き取りに伺った。故人は50歳くらいの女性。
病院で待っていたのは、依頼者である若干ファンキーな60歳手前くらいの男性と故人の両親だった。
軽く葬儀内容の説明をしていると、男性がおもむろに口を開く。
火葬するには管轄する役所に死亡届を提出し、火葬許可書を取得することが必須条件となる。
何かの手違いで火葬当日許可書が手元に無いといった事態を防ぐため、よほどの事情がない限り、前日までに葬儀屋が代行で手続きをすることが一般的だ。
馬鹿な!?
イケるかー!!!
力強い!無駄に力強い!泣
仕事が早い!!!
って、感心しとる場合かー!!!
そいつはまずいって!!!
誰がどう考えたって、完全にアウトだろー!!!
なんか映画のワンシーンで見たことある~♪
カッコよくてだまされそうなっちゃったけど、絶対に何かが間違ってるって!!!
ポジティブ感半端ない・・・
もちろん全力で止めましたが、最後まで「止める」とは言ってくれませんでした。
もう好きにして・・・その代わりどうなっても知りませんから・・・
婚姻届けの受理条件と扱い
後から却下されることは明白ですが、念のため馴染みの役所(今回の依頼者の管轄地域ではない)に確認をして、回答をいただきました。
正式な回答は以下の通り
しかし死亡届が提出された時点で戸籍の再照合を行うので、この時点で却下される。
根拠は婚姻届けとは、提出するまさにその瞬間、双方の結婚に対する意思が確定していることが条件であり、死者の意思は確認不可となるため。
つまり例え逝去直前に本人が直筆で記入したものであっても、正式に受理されることはない。
至極真っ当な回答ですね・・・
それにしても、役所の慌てっぷりが半端なかった・・・
「うち(管轄地域)ですか!?うちですか?」
って、めちゃめちゃ焦ってたな~
そりゃそうですよね・・・
ちなみに後日談としては、一応婚姻届けは提出したが、案の定、即日却下されたそうです。
幸い直後に私が死亡届を提出したので、婚姻届が未処理の状態で却下されたことと、事情を鑑みて情状酌量の余地ありとのことで犯罪には問われなかったそうですが、役所からこっぴどく怒られたと男性。
皆さん、くれぐれもマネしないでくださいね。
それにしても人生なんていつ幕が下されるか分かりません。
思い立ったが吉日です。
結婚を迷っている方は、手遅れにならないうちに今すぐ婚姻届けの提出を!
役所に提出した場合は【偽造有印私文書行使罪】となり、3ヶ月以上5年以下の有罪
役所が受理して戸籍に虚偽の記載がなされた場合は【電磁的公正証書原本不実記録罪】となり、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金