【とんでもない遺族の話】
法律や物理学の上では、遺体は物だ。
だが、遺族にとっては相変わらず者(人)だ。
故に考え方や感じ方も様々だ。
この辺りの感情が何とも悩ましい。
深夜12時近くに私の携帯が鳴る。母親を亡くした娘(喪主)からだ。
「色即是空さん、母のお腹の上に置いてあるドライアイス、取っちゃダメかしら?」
「どうしました?」
「いやね、母が『重い!』って言ってるみたいで。。。」
いやいや(汗)もう死んでるけどね・・・
もちろんそんなことは言えない。
「お気持ちは分かりますが、遺体は内臓から痛んでいきます。ですのでお腹周りを中心にドライアイスでご処置させて頂いております。まだお式までには数日ございますし、綺麗なお姿でお別れしたいのであれば、お薦めは出来ません。」
「そう。。。それならしょうがないわね。母には我慢するように私から説得しておきます。」
死んでるけどね・・・(もちろんそんなことは言えないけど。)
「お母様に『申し訳ございません』とお伝えください。」
死んでるけどね・・・(三回目)
翌日、別の遺族宅にドライアイスの交換で訪れた。ご遺体のお腹の上に新しいドライアイスを乗せる。
「ちょっと重いと思うんですが、少しの間だけ、勘弁してください。」
「色即是空さん、そんな心配しなくて大丈夫ですよ。婆さん(母)はもう死んでますから、ドライアイス何十キロ乗せたところでもう何も感じませんよ。腐らないように、ガンガン置いちゃってください。アハハハハハ。」
遺族によって感じ方が違うから面白いよねって話。