【とんでもない坊さんの話】
とある顔馴染みのご喪家の葬儀でのこと。式の前日、喪家から呼び出しを受けてご自宅に伺うと、渋い顔をした喪主様がお出迎え
「いや〜参りましたよ。先ほどお寺にお布施を持って行ったんですが、そのまま返されてしまいまして・・・」
「おっ!もしかしてお布施は要らないってことじゃないですか?ラッキーですね!笑」
「し、失礼しました・・・それで、どういうことですか?」
「いや、それがご住職に『これは一旦お返ししますから、よく考えてから出直して来なさい』ってだけ言われたんですが・・・要するにお布施の額が少ないってことですよね?」
「う〜ん・・・恐らくそうですね。ちなみにいくら包んでいかれたですか?」
「少ないとは思いませんけどね・・・うまい棒なら8万本買えますよ!」
う〜ん、ダメだ。いつもらな乗ってくれるユニークな方なんだが、今日はお布施のことで頭がいっぱいらしい。
「私もそう思ったんですが・・・色即是空さん(私のこと)、大変申し訳ないんですが、直接お寺さんに聞いてもらえないですかね?普段からお金のことを直接口にしたがらない住職ですから、我々が聞いても教えてくれないと思うんですよ・・・」
「分かりました。ぶっちゃけた所を聞いてみますよ」
葬儀で使う位牌を事前に届ける用もあったので、その足でお寺に伺う。
奥の座敷で住職と対決。
「ご住職、山田さん(仮名)のお布施の金額なんですが、ご喪家がいか程包めば良いのか悩んでおりまして・・・」
「お布施というのは気持ちです。いくらなどというモノはありませんよ」
あるじゃねぇか!
と言いたいところだが、ぐっと我慢。
「しかし、一旦お返しになられたとお聞きいたしました」
「それは今までの付き合いや、家の格というのもありますから、それに見合った額をご用意いただくということです。今回私はそうしたものに見合っていないのではないかと思ったので、お返ししました」
今回のご喪家は今までに多額の寄付をしてきたいわゆる【お金持ち】の家。
要するに取れるところからは、とことん取るってことじゃねーか!
どデカイ木魚の棒でぶっ叩いてやりたい所だが、ぐっと我慢。
「今回のご喪家の場合、ご住職の考える格とはどれほどのモノですか?」
「ですからそれは私の口からは言えませんよ。お布施はあくまでもお気持ちですから」
だったら返すんじゃねー!
熱々の線香をケツにぶっ刺してやりたい所だが、もち、ぐっと我慢。
なかなかしぶとい住職だが、こちとらあまたの坊主とやりあってきた身よ!
「そうですか。分かりました。山田さんは前回の額が妥当だと思っているようでして。それでは今一度考えた【気持ち】の最終結果が、例えば前回に気持ち色を付けた額でも、お受け取りいただけると解釈してよろしいでしょうか?」
一瞬、住職の顔がピクつく。
突然着物を着替え始める住職。
「かしこまりました。では私はこれで失礼します」
「あっ、ちょっと、ちょっと。後ろのフスマを開けたところに帯があるんで、取ってもらって良いかね?」
「いやだから、帯っていうのは良いよねって話だよ。締めると気持ちがピリッとするというか、ようし!やってやろうかっていう気になるよね。何事もね!」
!?
!?
!?
帯 → 帯封 → 札束 → 100万円 → 帯はやる気の源 → ヨロピクね♥
一休さ~ん!!!
今まで生きてきた人生の中で、最も苦々しいヒラメキの瞬間だったことは言うまでもない。
私の口からは言えないが、察したまえ!君!
って、差し詰めあんたは、悪徳政治家か!?
ちなみに後日ご喪家がお持ちした100万円は、しっかり受け取ってもらえたそうです。
とんちカマしてんじゃねーぞ!クソ坊主!って思ったとんでもない坊さんの話。