友引に葬儀はできない?
友引の日は火葬場が休み。よって式と火葬がセットで行われる告別式は出来ない(通夜はできる)。
みなさんはこんな認識を持っていませんか?
でもこれって本当?
そんな質問をいただきました。
はじめまして。
先月、父を亡くして寂しい思いをしている者です。
父の葬儀で、火葬場に運んでくださった霊柩車の運転手さんの話によると、「友引でも火葬場はやっている。なぜなら六曜は仏教とは無関係だから」とのことでした。
また、我が家は浄土真宗なのですが、やはり友引は仏教とは関係ないので、通夜、葬儀の日取りに考慮しないと聞きました。
もともと浄土真宗は、迷信は信じない宗派だそうです。 これは、浄土真宗だけなのでしょうか?
そもそも六曜って何?
六曜とは中国で生まれた日にち毎の暦注(れきちゅう)、つまり一日一日に吉凶が付いた占いの様なものです。
- 【先勝】【友引】【先負】
- 【仏滅】【大安】【赤口】
上記6つが順番に周ってきます。
「結婚式は大安吉日が良い」
「葬儀は友引を避ける」
「引っ越しは赤口にしないほうが良い」
日本でも六曜に関する様々な言い伝えがありますが、民間信仰からくる完全な迷信であり、結論から言えば仏教とは全く関係ありません。
友引とは?
「凶事に友を引く」の意味。
かつては「勝負なき日と知るべし」といわれ、勝負事で何事も引き分けになる日、つまり「共引」とされており、現在のような意味はなかった。
陰陽道で、ある日ある方向に事を行うと災いが友に及ぶとする「友引日」というものがあり、これが六曜の友引と混同されたものと考えられている。
元々六曜では「引き分け」の意として使われていたのが、陰陽道の「友引日」と混同され、(冥土に)友を引くとして、葬儀が避けられるようになったんですね。
友引の日に火葬場が休みの理由
それでは本題です。
現在日本の大半の火葬場が友引を非稼働日としています。
ではなぜ仏教とは全く関係のない六曜の影響をうけ、今でも可動を停止している火葬場が多いのでしょうか?
迷信や民間信仰が今よりはるかに重んじられていた昔ならいざ知らず、科学が支配する現代でも、こうした迷信が重んじられているのは不思議なことですね。
理由は大きく分けて2つあります。
火葬炉のメンテナンス
火葬場の数はそれ程多くはありません。
高温で一日フル稼働を強いられる火葬炉の傷みは想像するに難くありません。
万が一稼働日に炉が壊れたらそれこそ一大事です。
だいたいの火葬場は16時くらいで終わりですが、その後は例えば人体実験に使われた遺体のような訳あり遺体の火葬や、日中の火葬で炉にこびりついた人間の油を燃やしきるためのスローダウン運転、炉の冷却などが行われるため、営業時間後のメンテナンスは時間的に困難です。
そこでどうしても一日集中的に炉のメンテナンスをする時間が必要となってきます。対応策として一般的に葬儀を忌み嫌う友引を休みとして炉やその他設備のメンテナンスに当てているわけです。
通夜は出来るの?
友引の日は火葬ができないため告別式はできませんが、火葬とは関係ない通夜は可能です。
これはそもそも通夜とは、訃報の知らせを受けた故人と縁のある人間たちが駆けつけ、故人を夜通し偲ぶというもの。
聖職者を呼んできちんとした「(葬)儀式」として行うようになったのはそれ程、古い話ではありません。
「通夜=きちんとした(葬)儀式=避けるべき」という感覚にはならなかったのでしょう。
葬儀業界の定休日
一般企業なら土日、美術館や図書館、理容院なら月曜日、美容院なら火曜日・・・
多くの業界にはある程度決まった休みが存在します。
ところがいつ葬儀やご遺体の搬送、遺族の呼び出しがかかるかわからない葬儀業界は、24時間365日稼働しています。
これでは休みはおろか、会社の飲み会すらおちおちセッティングできません。
しかし、友引に火葬場が休みとなれば、前述のとおり友引に告別式ができません。
通常告別式の前日に行われるのが通夜ですから、そうなれば必然的に友引の前日は通夜ができません。
- 友引前日 告別式はOK 通夜はNG(翌日は告別式ができないから)
- 友引当日 告別式はNG 通夜はOK
遺体の搬送業務などは発生しますが、絶対的な仕事量が減るため、友引前日や友引当日をうまく使って夜遊びに行ったり、社員を休ませたりすることが可能になります。
僧侶などの聖職者・葬儀屋・火葬場・貸式場・花屋・料理屋・返礼品屋・テント屋・・・
葬儀業界に携わる人間にとって、曜日よりも日付よりも、唯一絶対的な存在。
それが「友引」なのです。
浄土真宗と友引
仏教の宗派の中で特に民間信仰や迷信を嫌うのが浄土真宗です。
しかし前述のとおり、六曜と仏教は全く関係がありません。つまりどんな宗派であろうとも、できる状況なら普通に式は執り行います。
強いて言えば浄土真宗は迷信を明確に拒絶する、その他の宗派は時代の波に乗りながら、基本的には喪家に任せるという傾向があります。
つまり他の宗派は基本的には葬儀業界の人間同様、友引の習慣をうまく利用して予定をやりくりし、浄土真宗は自らの予定よりも宗派の教義を貫きたいと考えてます。
しかしどんなに浄土真宗のお寺が騒いでも、火葬場がやっていなければどうすることもできません。
よって宗派による違いというよりは、単純に地域の火葬場の都合と考えたほうがいいでしょう。
東京23区火葬場の稼働状況
参考までに東京都区部と近隣の火葬場の運営状況を載せておきます。
東京都江戸川区にある東京都内で唯一都が管理している公営火葬場。友引は休業。
大田区にある公営火葬場。大田区・品川区・目黒区・港区・世田谷区の共同運営火葬場。都内で唯一友引も稼働している。
東京博善社が運営する六つの民間火葬場【落合斎場(新宿区)・代々幡斎場(渋谷区)・町屋斎場(荒川区)・四ツ木斎場(葛飾区)・堀ノ内(杉並区)・桐ヶ谷斎場(品川区)】は友引は全て休業。
板橋区にある(株)戸田葬祭場が運営する民間火葬場。友引は休業。
東京都足立区との県境、埼玉県草加市の端に位置する(株)聖典八塚が運営する民間火葬場。友引は休業。
東京都府中市ある(株)日華が運営する民間火葬場。友引は休業。
23区とその周辺に位置する火葬場で友引も稼働しているの火葬場は、僅かに臨海斎場のみ。
その他の火葬場は友引は全て休業となっています。
今後の火葬場運営
何度も触れてきたとおり、基本的に日本の主な宗教と六曜は関係ありません。
しかしただでさえこれから団塊の世代が寿命を迎え、火葬場が足りなくなる時代に突入すると言われている昨今。
一昔前まで友引に可動する火葬場など考えられなかったのでしょうが、比較的新しい臨海斎場をはじめ、まだまだ一部ですが川崎市の火葬場や千葉県の火葬場など、1都3県でも友引も稼働する斎場が存在感を強めつつあります。
今後は人口密集地を中心に「友引だから」と悠長なことを言っていられない時代が来るのは間違いないでしょう。
徐々に友引も稼働する火葬場が増えてくるかも知れませんね。
葬儀着業界の人間としては、とっても悲しいことなんですがね・・・