最大規模の被害村の13歳 おじに引き取られ
ネパール大地震で、最大規模の被害が出たシンドゥパルチョーク地区の村に住んでいたナビン・シャンタン君(13)は、大好きだった父を亡くした。
幼い頃に母は他界しており、1人になってしまったナビン君は地震後、カトマンズのおじに引き取られた。
まだあどけなさの残る少年に、将来のことを考える余裕はない。ただ、いつも勉強の大切さを教えてくれた父の言葉を胸に抱いて生きていこうとしている。
ナビン君は1歳半の時、母を病気で亡くした。家が貧しく、母はまともに病院にかかることもできなかった。その後は、父ナラヤンさん(39)と2人きりで暮らしていた。
地震があった時は外出し、大好きなサッカーに興じていた。揺れに襲われ、村人が避難していたテントに身を寄せた。父は昼食のために家に残っていた。
村の民家約100軒の大半が倒壊し、多数の死者が出たという。「今は危険だ」。父を捜しに家に戻ろうとすると周囲に引き止められた。「お父さんが心配でずっと泣いていたんだ」。3日後、やっと戻ったが、父は潰れた家で息絶えていた。
真面目で、無口な父だった。登山客に同行して荷物を運ぶ「ポーター」が仕事で、長期間留守にすることが多く、ナビン君はよく祖母の家で過ごした。地震の時も、父は1カ月半ぶりに山から戻ってきたところだった。
満足な教育を受けられなかった父は、ぎりぎりの暮らしを支えるため畑仕事もした。自分のような苦労をさせたくなかったのか、ナビン君が学校の宿題をせずに友達とサッカーをしようと出ていくと、よく「自分のために勉強をしなくてはだめだ」としかった。
ナビン君のささやかな楽しみは、夜、父と一緒に眠ることだった。目の前の大きな背中。「時々しか一緒に寝られないけれど、安心できた」という。
地震後、祖母は体調を崩して入院。ナビン君を引き取った、おじのリラ・ワイバさん(30)は「両親がいなくても、しっかり教育を受けさせてあげたい」と思いながらも、自身も幼い子が2人いるため、どう生計を立てようかと悩んでいる。
ナビン君は、これからどうしていいのかも分からない。「自分のために勉強を」。ただ、父の言葉だけは守ろうと思っている。
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