葬儀の新しい形
宮型霊柩車が消えた「本当の本当の理由」
以前、「お葬式から宮型霊柩車と花輪が消えた本当の理由」でも書きましたが、いよいよ宮型霊柩車が絶滅の危機に貧しているようです。
宮型霊柩車“絶滅”危機 1月に“元祖”倒産…「日本の葬送文化の喪失」 海外へ活路見出す業者も
金箔(きんぱく)などで豪華な装飾を施した「宮型霊柩(れいきゅう)車」が減少している。近年では、派手な葬送が敬遠され、住民への配慮から、条例で火葬場への入場を禁止する自治体もあるという。
最近は、簡素な葬儀や密葬も増え、派手な装飾がない「洋型」や「バン型」が増え、宮型の存在感は薄まっている。
◆“元祖”が倒産
今年1月、宮型霊柩車の衰退を象徴する出来事が起きた。一部有識者から宮型の“元祖”とも評される大阪市鶴見区の霊柩車製造会社「セガワ」が、裁判所から破産手続きの開始決定を受けたのだ。大正9(1920)年創業で、業界では霊柩車製造の草分け的存在として知られていた。
代理人弁護士によると、霊柩車単価が下落し、受注減少による採算の悪化が影響したとみられる。かつて主力だった宮型も近年、需要は少なくなり、100年近く続いた同社の霊柩車作りは静かに幕を閉じた。
◆全体の約1割
「全国霊柩自動車協会」(全霊協)によると、昨年4月時点で、全国にある霊柩車は計約5千台。洋型とバン型が約8割で、宮型は約650台と霊柩車全体の約1割だ。
宮型はピークの平成12年には約2150台あったというがその後減少。21年ごろには洋型を下回った。料金体系は宮型、洋型ともに距離10キロで2万~5万円程度だが近年は減少傾向が続く。
全霊協が16年ごろに加盟業者の協力で行った調査では、全国150以上の火葬場がすでに宮型の入場を規制していた。大阪府枚方市や埼玉県越谷市は条例で火葬場への出入りを禁止。宮型霊柩車を敬遠する住民に配慮する自治体が増えている。
◆自宅葬の減少
『霊柩車の誕生』の著書がある国際日本文化研究センターの井上章一教授によると、宮型は大正期、大阪の会社「駕友(かごとも)」が始めたのが通説とされているが、今年1月に倒産したセガワや他県の業者が元祖とする説もあるようだ。
大正末期、路面電車が普及すると、ひつぎを輿(こし)で担いで自宅から墓地まで葬列をなす「野辺の送り」が線路をふさぐ迷惑行為とされ、自動車の発達で火葬場が郊外に増え、遺体を運ぶ役目は輿から車に代わる。
井上教授は「当初は、死体を車の積み荷にするようなやり方は抵抗があったが、車を使うしかない背景もあり、せめて飾りを付けようと始まったのが宮型」と説明する。
宮型が減少した理由について、井上教授は「自宅での葬儀が減ったこと」を挙げる。霊柩車が同じルートをたどって郊外の火葬場に向かうため、1日に何度も見かける住民が「死を連想して不吉だ」と考え始め、嫌われる存在になったようだ。
さらに「社会の洋風化」が日本の宗教、死生観を変え、衰退を加速させたとみている。
4井上教授は「人の気持ちが時代とともに変わるのは仕方ないが、社会から宮型がなくなるのは寂しい」と話していた。
■「走る寺」アジアの仏教国では歓迎
減少の一途をたどる日本国内とは対照的に、アジアの仏教国では派手な金色装飾の宮型霊柩車が脚光を浴びつつある。モンゴルでは「走る寺」と歓迎され、社会主義時代に寺が破壊されるなど迫害を受けた仏教のイメージアップにも寄与しているという。
日本葬送文化学会員で葬祭業者「アラキ」(千葉県八街市)の荒木由光社長(68)は平成15年以降、中古の宮型3台をモンゴルの国営葬儀社に寄贈。学会のモンゴル視察で、ある僧から「あの宮殿のような車を譲ってほしい」と言われたのが始まりだった。
同国は土葬や風葬が根付いていたが、当時は墓地不足などから火葬が見直されていた。ただ、ひつぎを積む車は軽トラックと簡素なものしかなく、「金ぴかの宮型が死者を盛大に弔う同国の国民性と合致したのかも」と荒木社長は振り返る。
当時、ウランバートル市長から感謝状を受けるなど自治体にも歓迎され、マスコミ取材も殺到。現在、寄贈を受けた国営葬儀社では宮型から予約が埋まっていくほど人気だという。
同社は26年、仏教国ラオスにも宮型1台を寄贈。荒木社長は「宮型がなくなることは日本の葬送文化の喪失。海外に活路を見いだすのも道だ」としたうえで、「いつからか日本人は身近な人の最期を盛大に弔わなくなった。宮型に目を向け、多くの人にいま一度、葬儀のあり方を問い直してほしい」と訴えた。
本当の本当の理由①
ここまでは以前が私が書いた内容とおおよそ一致しています。
sougi-soushiki.beauty-box.tokyo
ところが先日、日本最大手の遺体搬送専門業社である東京霊柩自動車 (トウレイ)の最古参メンバー達と話していると意外な答えが返ってきました。
最古参ドライバー
「いや、原因はアレだよ、あれ。」
私
「何ですか?」
最古参ドライバー
「ぶっちゃんだよ、ぶっちゃん」
私
「ぶっちゃん?」
最古参メンバー
「小渕っちゃんだよ、小渕っちゃん。」
文字数を稼ぐせこい手法はこのくらいにして・・・
そうです。2000年に急死した小渕恵三元総理の葬儀が、ターニングポイントだったと言うのです。
政治的手腕はさておき、その親しみやすい人柄で人気を博し、さらには現役首相の病死というショッキングな内容が相まって、連日テレビで大々的に葬儀の内容が放送されました。
その時、画面いっぱいに映し出されていたのが、洋型・リムジンタイプの霊柩車だったのです。
(メルセデス・ベンツタイプの洋型リムジン)
前首相を乗せて颯爽と走ってく姿は、まさに有終の美そのもの。
「超かっこいい!イカす!」
となって、その葬儀をきっかけに、目に見えて、洋型霊柩車の注文が増えたそうです。
さらにこの流れは芸能界にも飛び火。多くの有名人の葬儀で、さっそうと走る洋型霊柩車が映し出されるたびに、「洋高和低」とも言えるこの現象は、如何ともしがたいものになっていったとのことでした。
宗教感の薄れ・人間関係の薄れ・生活の洋式化などの流れの中で、小渕元総理の葬儀が決定打を放ったといったところでしょうか。
本当の本当の理由②
もうひとつは、重要な理由ですが、大して面白みも目新しさもない、おまけみたいなものです。
ズバリ金額が高いから。
上記の記事に霊柩車の値段は10kmで2万円-5万円とあります。正確には地域や車種によりもう少し上下共に幅はありあますが、宮型はもちろん最上位に位置します。
厳密に言えば宮型にもいくつか種類がありますが、総じて最上位クラスと言えます。
2万円で普通の洋型クラウンタイプの霊柩車、5万円で宮型霊柩車。
さぁ、あなたならどちらを選びますか?
ただでさえ少しでも葬儀費用を安く抑えようという今日の流れの中にあって、総じて値段の高い宮型が衰退していくのは、当然の流れなのかも知れませんね。
私も含め多くの人間にとって、宗教よりも、理想よりも、社会的体裁よりも最も重きを置かざる得ないもの。
それはやはり・・・
「お金」ですからね。
最後に
トウレイの運転手によれば、以前はどこの営業所でも、大体5-6年で新車にしていた宮型も、使用年数が急激に伸びる一方とのこと。
このままいけば「これが最後の一台」となる日は、そう遠くない将来訪れることになるかも知れませんね。
式場がお寺の本堂から葬儀斎場に移り、白木祭壇が花祭壇に変わり、宮型霊柩車が洋型に取って代わられ、仏壇を置く家が減少していく・・・
仏の住む山、須弥山を人工的に再現したのがお寺の本堂。それを小さくしたものが白木祭壇だったり、宮型霊柩車だったり、仏壇だったりする訳ですから、本来は非常に重要な意味を持つものなのです。
そうした文化がどんどん失われていってしまうというのは、やはり悲しいものですね・・・
合わせて読みたい!いや、読んでいただきたい!
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