【熊本地震】「何げない会話が最後になるなんて」 熊本地震で友人を亡くす

九州で初めて震度7の激震が直撃し、9人が犠牲になった「熊本地震」。

一夜明けた15日も震源に近い熊本県益城町を中心に救助活動が続いた。懸命の救出が相次ぐ一方で、突然家族を失った住民は「信じたくない」と絶句した。熊本地方は16日夜から雨の予報で、二次災害と復旧の遅れを心配する避難所の住民は疲労の色を濃くした。

震災で亡くなった9人は、それぞれの人生を突如奪われた。  

「助けて、助けて」。15日未明、益城町惣領(そうりょう)のマンション敷地から女性の声が響いた。ブロックの塀が崩れ、熊本市東区の坂本龍也さん(29)が下敷きになっていた。  

負傷した知人女性が助けを求めたが、救急隊はなかなか到着しない。午前2時前にレスキュー車が到着し、午前3時ごろ坂本さんを引き出したが、すでに力尽きていた。  

農家の三男で、親族男性によると「自分が後を継ぐような気持ちで小さいころから農業を一生懸命手伝っていた」という。  

別の親族の女性は「ブロックの下敷きになるなんて、さぞ苦しかっただろう」。中学時代からの友人(28)は「1週間前に会い、何げない会話を交わしたが、あれがまさか最後になるなんて」とうめいた。  

15日午後、同じ同町惣領の1階部分がぺしゃんこに崩れた家屋の前で、男子大学生(20)が立ち尽くしていた。

自宅でカラオケ教室を営んでいた祖父の荒牧不二人さん(84)はレッスン中に家屋が倒壊し、生き埋めになった。助け出された生徒の女性(62)は「『先生』と呼び続けたけれど、返事はなかった」。

熊本市から駆け付けた大学生は、消防団と一緒にがれきの中から荒牧さんを見つけ出した。「じいちゃん」と何度呼び掛けても反応がなかった。「いつも笑顔で病気もなくぴんとして、長生きできる人だったのに」と泣きじゃくった。  

「お母さん! お母さん!」。同町寺迫では14日深夜、倒壊した民家に向かって中学生ぐらいの少年が叫んでいた。母親は無事が確認されたが、祖母の富田知子さん(89)は心肺停止で見つかった。

次男龍夫さん(62)は「天災で人間の力ではどうにもならなかったのかとも思うけど、無念」と声を絞り出した。  

15日未明、同町木山で崩れ落ちた2階建て家屋前では、村上正孝さん(61)の妻が夫の名前を叫んでいた。

タクシー運転手の正孝さんは妻と中高生の息子2人、母親のハナエさん(94)と5人暮らし。妻と子どもたちは助かったが、正孝さんとハナエさんがいた1階部分が押しつぶされ帰らぬ人となった。

同町馬水の宮守陽子さん(55)も、倒壊した自宅から発見され死亡が確認された。一帯の家屋は軒並み1階部分がつぶれ、ブロック塀が剥がれ落ちるように崩れていた。

近所の男性(72)は「一緒に住んでいた娘さんたちが『お母さん』と必死に呼び掛けている姿がふびんでならなかった」と語った。  

「助けてくれ!」。同町広崎の伊藤俊明さん(61)は、自宅の下敷きになり助けを求め続けた。警察や消防ががれきを撤去し救助したときには、息絶えていた。幼なじみの広島継男さん(67)は「悲しいと言うより、悔しい」。  

同町安永の福本末子さん(54)も自宅が倒壊し、犠牲となった。近所の女性は「道で会うとあいさつをしてくれる気さくな人だった。本当にかわいそう」。  

熊本市東区の団地で見つかった松本由美子さん(68)は地震直後、近隣住民が「おばちゃん、大丈夫」と声を掛けた際には返事があった。

レスキュー隊が窓側から部屋に入ったが、手遅れだった。近所の女性は「明るくて優しい人だった。本当に悔しい」と声を詰まらせた。

西日本新聞 

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