【東日本大震災】<震災6年 会いたい>天から探して 空色の車

◎漂流ポストに託す(下)母から息子へ 高野慶子さん

岩手県陸前高田市広田町の杉林の中に立つ「漂流ポスト3.11」に、東日本大震災で亡くなった人たちへの手紙が届く。遺族らのやり場のない気持ちを受け止め、心をつなぐ。

もうすぐ震災から6年。「会いたい」。妻から夫へ。母から子へ。手紙に込めた思いに触れた。

■誕生日にメール

空をイメージした便箋を買った。絵文字を交えて語り掛けた。

<おーい トモ  おかあさんだよ~ 元気かあ? ドリフトはしてるかな?>

登米市の高野慶子さん(53)は東日本大震災から4年を迎えた日、陸前高田市にある「漂流ポスト3.11」に手紙を出した。宮城県南三陸町で、長男智則さん=当時(22)=を亡くした。

小さい頃から大の車好きで、自動車整備士になった。愛車のスカイラインで、あちこちの峠やレース場を走った。

好きなお笑い芸人のことやデートの相談。何でも話した。「夜勤明けのお母さん、まじ怖え~」。朝、介護施設の仕事を終えて帰宅すると、擦れ違いで出勤する智則さんに、よくからかわれた。

<会いたいよ 声ききたいよ トモが空から見つけられる様に おかあさんは 空色の車で走ってるよ>

ありふれた白色から、目立つ色に車を替えた。

夢の中に智則さんが現れると、そっちが現実のような気がした。寝ているときが一番楽だった。「泣いてばかりいると、成仏しないよ」。周囲の言葉に、卑屈になった。

つながりが切れそうで、携帯電話を解約していない。一方通行と分かっていても、お互いの誕生日などにメールを送る。

■次男の結婚報告

ふと曲が耳に入った。アコースティックデュオ、キマグレンの「天国の郵便ポスト」。雲の上にいる人に手紙を書き、返事が来るような内容の歌詞。手紙を出したくなった。

しばらくして、漂流ポストの存在を知った。

震災発生から丸5年の日も出した。次男航(わたる)さん(24)の結婚式の後も書いた。

<おかーさんの願いは トモとわった(航さん)がそれぞれの場所で しあわせになってくれる事 そして、また必ず、おとーさん、トモ、わったと家族になる事なんだヨ…>

あるときは智則さんになりきって、漂流ポストに手紙を送った。

<おかげで、ボクはおかあさんの手紙を読む事ができました>

亡くなった人も残された人も、悔しくて、悲しくて、つらくて、たくさん泣いた。そんな気持ちをポストは優しく救ってくれた。

やりきれなさは今もある。でも、智則さんからはいつも「笑っている顔が好き」と言われていた。慶子さんは思う。「いつか会うときのため、話題をいっぱい届けよう」

[漂流ポスト3.11]2014年3月、赤川勇治さん(67)が営むカフェに設置した。交通事故や病気などの遺族らからも届く。カフェに併設する小屋で読むことができる。

手紙は〒029-2208陸前高田市広田町赤坂角地159の2 森の小舎「漂流ポスト3.11」へ。

匿名や手紙の非公開も可能。

河北新報

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