お坊さんを格安で派遣する、「格安僧侶派遣」が抱える利点と大きな問題を、宗教界全体から見た大きな視点で考えてみる。
アマゾンで格安僧侶派遣サービスが販売され、賛否両論を引き起こした出来事など、葬儀における登録制僧侶派遣会社の問題が大きくクローズアップされています。
江戸時代、徳川吉宗の弟の上人(しょうにん)が創建したと伝わる大阪市天王寺区の柳谷観音大阪別院泰聖(たいしょう)寺。副住職の純空壮宏(じゅんくうそうこう)さん(38)は4年前、ある決断をした。
僧侶派遣会社に登録。会社に申し込みのあった通夜や葬儀を紹介してもらうことにした。
葬儀代は遺族から葬儀場で受け取る。葬儀代が16万円の場合、読経や戒名などのお布施として9万5千円を受け取り、残りは紹介料として派遣会社に渡す。派遣会社の紹介料は課税されるが、お布施は非課税だ。
8年前、住職の叔父が倒れたため得度した。檀家(だんか)は70軒で、葬儀は年1、2件。月収は約10万円しかなく、兼業するケアマネジャーの収入でしのいだ。
「葬儀や法事を紹介してほしい」。約1年間、大阪のほとんどの葬儀社に「営業」したが、効果はなかった。
現在は五つほどの派遣会社から紹介を受ける。昨年、120件の葬儀を紹介され、約1千万円を得た。葬儀後は一周忌や三回忌の法要も受け付け、最終的には境内の永代供養墓を申し込んでもらう。
日常的に寺とつき合いのない人たちとの接点が生まれた。「派遣は新たな信者を増やすきっかけ。檀家に頼るだけでは、小さな寺はやっていけない」
40代の男性僧侶は2012年、四国から上京。都内に家賃5万円のワンルームを借り、派遣会社3社に登録した。週に10件の葬儀や法事を紹介してもらい、毎月の収入は60万円になる。
四国の山間部にある実家の寺は住職の父が守る。葬儀は年数件しかなく、老朽化した本堂や庫裏の修復もままならない。
2年前から築35年の民家に移り、1階の6畳の和室を「東京別院」の本堂としている。首都圏での活動拠点だ。「昔ながらの檀家のように、寺への寄付は望めない。法要や新たな葬式をお願いしてもらえるようなつきあい方をしたい」
京都府の山間部にある寺の住職は派遣会社の紹介があると、車で大阪や神戸に通う。3時間以上かけて名古屋や岡山、和歌山まで出向くことも。交通費は自己負担だが、毎月の収入は約50万円になる。
寺は過疎地にあり、最寄り駅まで車で20分。檀家は50軒で葬儀は年1、2件しかない。都市部を中心に寺とのつきあいがない人たちが増えたのは「地方の寺にとってチャンス」とみる。
「檀家だけに頼らず、信頼を得た人たちによって寺を支えてもらう仕組みを築けば、地方の寺も可能性が出てくる」
葬儀代や戒名料を定額化している僧侶派遣会社はインターネット上で少なくとも数十社ある。主要宗派などでつくる全日本仏教会(全仏)は「宗教行為が商品化されている」と指摘。一方で、派遣会社の増加は「寺や僧侶の責任もある」と、各宗派が個別に設けている相談窓口を全仏のホームページなどで一覧にして紹介できないか検討を始めた。
淑徳大の武田道生(どうしょう)・元准教授(宗教学)は「都市部では、これまでのような檀家寺と、寺と関わりのない人を対象にした寺の二極化が進む。後者では住職の考えや人柄に共感する人が寺を支えることになる。『僧侶が選ばれる時代』になった」と指摘する。
朝日新聞(岡田匠)
確かに過疎化や若者の檀家離れが進み、廃業や住職のいない寺が大幅に増えつつある。住職の兼業も珍しくない。
こうした中で住職の派遣サービスを介してお寺を維持できるモデルケースが誕生することは良いことだ。
一方でこうした安いサービスが拡大するにつれ、檀家を抜けて霊園に移ったり、菩提寺に内緒で派遣僧侶を呼び、安く葬儀をあげてしまう檀家なども出始めている。
ただでさえお寺への寄付やお布施が昔に比べて数も量も減少する中で、お寺の資金繰りはかなり悪化している。もちろん神社などはもっと厳しい。
確かにお布施は確かに高い。べらぼうに高い。
しかし、ひとつの寺社仏閣を維持するというのは、一般の人が考えている以上にこれまたべらぼうな費用がかかるのも事実だ。
企業が競い合い、価格競争を繰り広げてより安くて質のいいサービスを提供していくとった、一般的な市場経済理論の範疇に収まる類のものとはまた次元が異なる。
もちろん自由経済が売りの資本主義社会の中にあって、宗教といえどもある程度消費者が選択の自由を与えられることは良いことだ。
しかし、宗教界が抜本的な改革に乗り出し、宗教離れを防ぐことに本腰を入れるなどの対策を施さない限り、寺の大量廃業など、社会にとって大変な問題が襲ってくることは間違いない。
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