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葬儀屋バカ一代

葬儀屋のブログ。誰もが気になる葬儀の話。実際にあったおかしな葬式や失敗談、仏事で役立つ葬儀豆知識など。

自殺を思いとどまったあの日・・・私は葬儀屋になろうと決意した...

自殺・自死遺族

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次第に肌寒さを感じるようになったあの日、私は台所でひとり、暗闇で鈍く光る包丁を握りしめていた・・・

 

自殺を思いとどまったあの日・・・私は葬儀屋になろうと決意した・・・

 

私は大学時代、イスラム文化を専攻していた。大学で2年間アラビア語イスラム文化を学んだ後、3年の時にエジプトの大学に交換留学もした。

 

大学卒業後は海外と関係の仕事を求めて、主に貴金属類を扱う商社に入社した。少々大げさに言えば、山手線と新幹線の区別が付かなくなる程、月の大半を国内外の出張に費やす生活で、東京の本社で私を見かけると良い事がある!と黄色いフォルクスワーゲンばりに同期に揶揄される程だったが、仕事は楽しかった。

 

社長の覚えもよろしく、将来の幹部候補生として期待されるほどだったが、そこは東京証券取引所に上場する企業。何をやるにもウンザリする程分厚い稟議書・稟請書の提出が待っていた。

 

営業の仕事は数字を上げることだと言いながらも、一番の仕事は社内中に頭を下げて回ることだという現実に嫌気がさし、5年で退社した。自由にやらせてくれれば、もっと出来るはず!そんな思いが抜けなかった。

 

退社後しばらくバックパックを担いで世界を放浪し、当時イケイケだったIT企業に入社した。池袋に本社を構える、業界人なら誰もが知る元祖ブラック企業!流石に上場してからは若干おとなしくなったとはいえ、数字が命のトンデモ企業だった。

 

家に帰れるのは週1-2回、朝の7時から夜中3時くらいまで働き続ける生活だったが、ここでも真面目な私は死に物狂いで働き、2年で主要組織の現場の責任者まで上り詰めた。

 

その時の詳しい様子はこちらの記事を参照していただきたい。

 

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しかし、そんな生活をしていて身体が持つ訳が無い。徐々にあちらこちらが悲鳴を上げ始める。

 

とある出来事を機に、私はその会社を退社。自分の顧客だった人物と組み、新しく会社を立ち上げた。老人ホームや施設、精神病院などに衣料品等を提供する会社だった。

 

元々IT企業時代に大きなコネクションを数多く持っていたこともあり、仕事は至って順調だった。

 

瞬く間に小さいながらも銀座に本社を構え、日本橋に事務所、浅草に店舗を出すまでになった。

 

しかし、そんな幸運は長くは続かなかった。

 

東京の郊外に元大型スーパーの跡地を建物ごと借り受け、大型店舗を出す話になった時のこと。東京の郊外には老人ホームや精神病院がごまんとある。この店舗を旗艦店として、一気に事業を拡大しようという腹積りだった。

 

ところがこの建物からアスベストらしき物が検出されたのだ。その後の交渉は困難を極め、次第に泥沼化していく。工事費用として多額の資金を施工会社に支払い済みだった上に、大量の備品や商品も購入済みだった。

 

建物の持ち主が巨大ディベロッパーだったこともあり、調停は長期化。訴訟に多額の費用や時間を取られ、あっという間に会社は傾き始める。

 

元々私は新規顧客獲得や既存顧客の対応を担当し、浅草の店舗や郊外の大型店舗計画は、私が組んだもう一人の取締役が独断で進めていた事業だった。

 

話し合いの末、私は代表取締役を降り、会社を去った。その為、借金を背負わなかったのがせめてもの救いだが、会社の経営に注ぎ込んだ影響で、個人的な預貯金は全て失った。

 

幸い友人が経営する別の会社の取締役に名を連ねており、そちらの経営にも手を出していたから良かった・・・

 

と思った矢先・・・

 

実質的なオーナーが証券取締役法違反で逮捕された。

 

私が入社する以前の犯罪であり、私自身の身の潔白はすぐに証明されたが、警察の一斉捜査が入り、営業どころではなくなっていた。

 

 

自慢ではないが、それなりに栄光の人生を歩んできたつもりだった。

 

しかしジェトコースターの様な人生の中で、当時婚約していた彼女は、同棲していたアパートに帰って来ない私の為に涙が枯れはて、突然去っていった。

 

仕事も金も地位も名誉も彼女も全て失い、私の手元にはアパートの賃料さえ払える金も残っていなかった。

 

その後の成れの果てが、冒頭の一節である。

 

「死ねば楽になれる」当時の私はそのことしか考えていなかった。だか両親の顔が、兄弟の顔が目に浮かび、結局死に切れなかった。

 

今でも思うことがある。私にほんの少しの勇気があったなら、私はもうこの世にいないだろうと。

 

死にたい願望を捨てきれた訳ではないが、私は大家に事情を説明し、当面の生活費を稼ぐ為、葬儀屋の手伝いを始めた。

 

理由は敬遠されがちな職業であった為、給料が良かったことと、来るべく自分の葬儀の為に、現場を体験しておきたかったのだ。

 

そうした意味で、私にはうってつけの職業だった。

 

最初に「死体」(あえてここでは【遺体】ではなく、【死体】と呼ぶ)を見た時のことは今でもよく覚えている。死を意識した私にとってもそれは怖かった。モノ言わぬ躯の放つ不気味なオーラに、死装束を施す手がかすかに震えていたのを、今でも鮮明に覚えている。

 

そんなお世辞には素晴らしいとは言えないデビューだったが、私は持ち前の生真面目さを発揮して、必死で働いた。

 

実のところ私は葬儀の持つ雰囲気が嫌いではなかった。

 

私がエジプトへの留学を決意したのは、幼い頃から宗教の持つ神秘的な匂いが好きだったからだ。

 

本当のことを言うと、駒沢大学の仏教学部に入学したかったのだが、本来は寺の息子が僧侶になるべく勉強するところ。お寺に何のコネクションも持たない、それでいて将来僧侶になる予定もない私には、ちょっとばかりハードルが高かった。

 

仏教は早々に諦めざるを得なかったが、だったらいっそ全く別の角度から、宗教比較をしてみよう。それがイスラムについて学ぶことにしたきっかけだった。

 

 

話を元に戻すが、そうしていくつかの葬儀屋を手伝うようになり、いつしかそのうちのひとつから、特別な扱いを受けるようになる。その葬儀屋こそ現在私の勤める葬儀屋なのだが、私が特別扱いを受けたのには、人柄や働きっぷりを気に入ってもらった他に、大きな理由があった。

 

それは、代々続く老舗の葬儀屋でありながら、次の世代を担う跡取りも、そして社員もいないということだ。この辺りの経緯は話すと長くなるので、詳しい説明は省くが、要するに私に次世代を担って立つ役割を期待していたのだ。

 

実際、一緒にやらないかと何度も声をかけられるようになるが、いつもその話になると私はのらりくらりとかわしていた。

 

実はその時、いつくかの葬儀屋を手伝う一方で、私は性懲りもせず、知人とネットショップを立ち上げており、それがそこそこ上手くいきかけていた。

 

老舗の持つブランド力と、その力が呼び寄せる地位の高い人間や、金持ちの顧客には魅力を感じていたのは確かだが、ネットショップのこともあったし、何より死ぬ夢を諦めたわけではなかったのが大きかった。

 

だが、そんな私をひとりの女性が変えることになる。実際には以前「女性だったモノ・・・」なのだが。

 

下記は私が初めて自殺の人間の葬儀を担当したときのことを記した記事だ。

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この記事には書かなかったが、私は彼女とある会話をした。(と今でも思っている)

 

私「何故自殺なんてしたんだ?何故!?」

 

彼女「あんたに言われるとは・・・」

 

私「それはそだうだけど・・・君のお父さんがどれほど悲しんでいるか知っているのか!?」

 

彼女「あんたが死んだら、あんたの父親だって同じようなもんでしょ?まぁ、あんたはそれが分かっているから死ねなかったんでしょうけど。」

 

私「それは・・・」

 

彼女「理由がどうだとか、それが綺麗事だとか、そんなの別にどうでもいいじゃん。少しでもこの世に未練があるなら、あんたはまだこっちに来るべきじゃない!

 

 

私は霊など信じてはいない。恐らくこの会話もただの妄想だ。

 

だが事実はどうであれ、私にとっての【真実】はひとつだ。

 

その言葉によって、私はこの世に押し止められた。

 

葬儀屋として、生きていこうと思った時、不思議と自殺願望は完全に消えていた。

 

私はネットショップの全てを知人に譲り、お世話になった葬儀屋の皆と共に生きていくことを心に決めた。

 

本気で死を意識した自分だからこそ、分かることがある。

 

本気で死を覚悟した自分だからこそ、出来ることがある。

 

全ては故人の為に!そして残された遺族の為に!

 

故人が心おきなくこの世を離れられるように、そして残された遺族が一日でも早く前を向いて歩いていけるように・・・

 

今日も精一杯の想いを胸に、悲しみの場に立つ。

 

 

あまり人に自分の過去を赤裸々に語ったことは無かったが、貫洞(かんどー)さんが過去の苦い経験を語っているのを見て、みんなそれなりに苦労してるんだね~なんて少し気が楽になった記憶があったので、たまにはこんな記事もありかな~と思って、書いてみました。

 

長文にお付き合いいただき有難うございましたm(_ _)m

 

今週のお題「今の仕事を選んだ理由」

 

この記事はメインブログ【丸腰の侍世界をやんわり斬る】で書いた記事を転機しています。

 

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